一次診療施設で良く遭遇する乳腺腫瘍は不妊手術でその発生リスクを低下させられると言われている。しかし、猫の乳腺腫瘍に関する疫学を明らかにした研究によると、不妊手術は発症リスクと関連していなかったという結果が得られたという。これは一体どういったことであろうか。不妊手術と同等、あるいは、それ以上にリスクを左右するファクターがあるのだろうか。
冒頭のような背景の中、RVCらは、大規模臨床データベースVetCompassに登録された2016年分の犬の診療記録を解析し、乳腺腫瘍に関与するファクターを特定する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬の乳腺腫瘍に関する疫学◆
・10万匹に約1341匹が発症していた(有病率約1.3%)
・スプリンガースパニエル、コッカースパニエル、ボクサー、スタッフォードシャーブルテリア、ラサアプソでの発症率が高かった
・不妊手術は発症率を低下させるファクターだった
・加齢と偽妊娠歴は発症率を上昇させるファクターだった
上記のことから、加齢と偽妊娠歴が発症リスクになっていることが窺える。特に加齢は、ペットの高齢化が進む現代において由々しき問題である。果たして、この加齢で起きる乳腺腫瘍を予防する方法はあるのか。今後、更なる研究が進み、不妊手術以外の予防医療が考案されることを期待している。
参考ページ:
https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/vetr.3054