特発性てんかんは、ヒトおよび犬で一般的な神経系疾患で、神経の興奮と抑制の調整がアンバランスになった状態だとされている。一方で話は変わるが、これらの興奮と抑制に関与する神経伝達物質は、中枢神経から抹消神経へと輸送され、最終的に尿として体外へ排出されるのだ。つまり、健常者(①健康な犬)と、てんかんに罹患したヒト(②犬)の尿に含まれる神経伝達物質のプロファイルは異なると考えられるのだ。
そこで、ヨーロッパの大学および研究所らは、①と②に該当する犬それぞれ60匹以上と120匹以上を対象にして、彼らの尿サンプルを解析する研究を行った。すると、両者の間において、グリシンおよびセロトニンの濃度、そして、ノルエピネフリンとエピネフリンの比およびγ-アミノ酪酸とグルタミン酸の比が有意に異なることは判明したという。また、セロトニンとγ-アミノ酪酸の濃度をモニタリングすると、そこには抗てんかん薬の影響が見て取れるとのことである。
上記のことから、①と②の尿に含まれる神経伝達物質のプロファイルは異なることが立証された。よって、今後、同プロファイルを分析して特発性てんかんを診断する手法が確立されることを願っている。また、このプロファイルの相違点から、ヒトと犬の特発性てんかんをより深く理解するヒントが得られることを期待している。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.893013/full