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指示に従おうとする犬が読み取るヒトの表情に関する研究

投稿者:武井 昭紘

2018年6月に発表されたイタリアのバーリ大学の研究によると、犬は、ヒトの怒り、もしくは、幸福のどちらか一方を感じている表情を同一の脳領域で認識しており、両者の相違点を区別していない可能性があるとのことである。つまり、この事実を示した研究は、犬を躾けたり、トレーニングしたりする時は、ヒトは感情を顔に出さずに「無表情」に徹することが望ましいと教えてくれているようにも思えるのだ。仮に、そうであるならば、犬とヒトとの円滑なコミュニケーションに最適なヒトの表情や動作は、未だに全容が解明されていないと言え、現在の一般的な常識(怒る時・褒める時の表情など)とは異なる真実を追求する必要があると考えられるのではないだろうか。

そこで、リンカーン大学(イギリス)は、ヒトがある方向を指さす動作に対して犬が興味を示して「その」ポイントへ向かっていくための最適なヒトの表情に着目し、行動学的な解析を行った。すると、犬は、ヒトが無表情または怒りの表情をしている時に行動を起こしやすく、幸福の表情をしている時は指示する方向へと向かおうとしなくなることが明らかとなったとのことである。

上記のことから、犬を指定の場所へと移動させたい時に見せる表情は、優しさに満ちた幸福の表情ではなく、ヒトから見ると厳しさとも感じられる「無表情」や怒りの表情が適していると言える。よって、「言うことを聞いてくれない」というペットオーナーの悩みを診察中に伺った獣医師は、その時の表情についてアドバイスすることが良いのかも知れない。

上記のような行動学的解析が進展すると、ヒトの表情をコントロールするだけで、犬の問題行動を減らせる未来が訪れるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30610904/


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