ヒトおよび動物、双方の健康に配慮したペットライフを実現するためのポイント(One Health)の一つに、動物病院での徹底した予防医療が挙げられるのだが、アメリカのミシシッピデルタにはミルベマイシンオキシムに耐性を持つフィラリアが分布していることが知られている通り、寄生虫における薬剤耐性への意識と対策が、今後のOne Healthにとって克服すべき課題点であると言える。中でも、特にズーノーシスとされる感染症は、ヒトと動物に共通して感染するものであるため、国外の動向といえども迅速な情報の共有が重要だと考えられる。そこで、先月、発表された論文を以下に紹介したい。
同発表は、エチオピアとアメリカの大学によって報告されており、ある母集団の犬において約2年もの間、瓜実条虫(サナダムシ)の駆除に苦慮したという内容となっている。なお、使用された薬剤は日本にも流通しているプラジカンテルであり、大学らによると、この時に感染していた当該寄生虫はプラジカンテルに対する耐性を獲得していたとのことである。
上記のことより、海外渡航歴のある犬から瓜実条虫が検出された場合には、薬剤耐性の可能性を念頭に置いておくことが望ましいのではないだろうか。また、これを契機として、本国におけるプラジカンテル耐性瓜実条虫の分布の有無について調査が進められることを願っている。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30226153