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自発性慢性角膜上皮欠損を発症した犬の特徴を集積した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の自発性慢性角膜上皮欠損(spontaneous chronic corneal epithelial defects、SCCEDs)は、層構造の角膜に接着不全が生じて、点眼治療ではコントロールが難しい創傷(潰瘍)が起きる病気である。そのため、当該疾患と通常の角膜潰瘍は鑑別する必要があるのだ。つまり、鑑別診断のヒントとして、SCCEDsを発症する犬の特徴を把握することが大切と言えるのである。

 

冒頭のような背景の中、イギリスのエクセター大学は、過去13年間に眼科診療を主とする動物病院を訪れた、SCCEDsの犬300匹以上を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆SCCEDsを発症した犬の特徴◆
・初診時の年齢の中央値は8歳(1~15歳)であった
・約42%の症例が①ボクサーであった
・次いで約12%が②スタッフォードシャーブルテリア、約6.5%が③フレンチブルドッグが並んだ
・母集団と比べて上記3犬種のオッズ比は1.64~1.79倍と高い値を示した
・両目にSCCEDsを発症した犬の再来院のタイミングは中央値で4ヶ月後(0~42ヶ月)であった
・症例数は③で増加し、①で減少し、②で一定であった

 

これらの事実から、特定の犬種でSCCEDsが起こりやすいことが窺える。また、フレンチブルドッグの症例数が増えていることも分かる。よって、該当犬種の角膜潰瘍では特にSCCEDsとの鑑別を慎重に行うことが望ましいと思われる。そして今後、フレンチブルドッグを中心にして、SCCEDsの有病率(発生率)を抑える予防医療を確立する研究が進み、犬の眼科診療が発展することに期待している。

フレンチブルドッグに限ると、初診時の年齢は6歳とより若くなることが分かったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36030371/


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