蚊が媒介するミクロフィラリアが犬に感染することで、フィラリアの感染が始まる。そのため、「犬に感染したミクロフィラリアを駆除する」ことが、フィラリア予防であると考えられている。しかし、ある研究がフィラリア予防の根底を変える結果を得たとして発表された。
ある研究とはジョージア大学が行ったもので、32匹の犬が参加し、以下のような4つの群(8匹ごと)に分けられた。
1.コントロール群
2.DPPのみを投与した群(DPP単独群)
3.DPPおよびミルベマイシンオキシムを投与した群(DPP+ミルベマイシン群)
4.ミルベマイシンオキシムのみを投与した群(ミルベマイシン単独群)
いずれの群もミルベマイシンオキシムに耐性を持っているフィラリア(アメリカのミシシッピデルタに分布している)を媒介する蚊に暴露した。また、DPPとはdinotefuran-permethrin-pyriproxyfenの略で、Ceva Animal Health社のVectra 3Dという製剤に含まれる成分で、蚊などの節足動物を寄せ付けない忌避剤である。Vectra 3Dはスポット剤で、使用方法はこちらを参照頂きたい(フロントラインおよびレボリューションとは異なる使い方が動画で見られると思う)。
研究の結果は、コントロール群に比べて、ミルベマイシン単独群ではフィラリア成虫の数は半分以下となったが、ミクロフィラリアの感染数に差は認められなかった。つまり、犬が蚊に刺される頻度は、コントロール群とミルベマイシン単独群では同程度であるということである。しかし、DPP単独群およびDPP+ミルベマイシン群では、コントロール群に比べて、ミクロフィラリアの感染数が有意に減少した(DPPの効果で蚊に刺される頻度が減少したことが示唆される)。さらに、DPP単独群およびDPP+ミルベマイシン群では、フィラリア成虫の数も有意に減少していることが判明した。
上記のことから、「蚊に刺されないように予防する」ことは、フィラリア予防として非常に有効であると考えられる。今後、研究が進み、フィラリア予防の中心が「ミクロフィラリアを駆除する予防」から「蚊に刺されない予防」に移行するかも知れない。そして、Vectra 3Dのようなフィラリア予防薬が、日本でも普及することに期待したい。
参考ページ:
http://veterinarynews.dvm360.com/new-research-cited-support-change-heartworm-protocol