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犬猫の皮膚病を起こすMalassezia pachydermatisの病原性の数値化を試みた研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床では、外気温に湿度の上昇が伴う季節(夏)を迎えると、皮膚病での来院件数が増加する傾向にある。また、前述した皮膚トラブルの原因の一つには、マラセチアが知られているのだが、病歴・治療経過は症例ごとに多様性を極める。それを裏付けるように、犬猫に感染するマラセチアであるMalassezia pachydermatisM. pachydermatis)は、遺伝子配列で区別される株によって分子生物学的な相違が生じ、脂質要求性が異なるという報告も上がっている(参照リンク)。つまり、臨床現場から見たマラセチア性皮膚炎と当該病原体の脂質要求性との関連性について解析することは、一研究分野として成立するのではないだろうか。

今月、上記のヒントとなり得る研究が、ブラジルの大学から発表された。なお、同発表では、研究で汎用される①線虫類(C. elegans)に②M. pachydermatisを曝露して①の死亡率を算出する方式で、②の病原性を表現している。

このことから、②の「病原性と脂質要求性」、「病原性と臨床症状」、「脂質要求性と臨床症状」などについて検証を行えば、症例ごとにマラセチア性皮膚炎の治療方針決定や予後判定を行うために、客観的な指標を提供する病原性検査法が確立できるかも知れない。

皮膚病を抱えているペットを診察する上で、病原性の低いマラセチアが検出されたと認識できれば、他の病原体の存在をいち早く疑えるのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29885800


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