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犬の皮膚腫瘍の悪性度判定・再発予測に有用な血清中マーカーに関する研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における腫瘍性疾患は、全身麻酔下での精査を実施しないと、悪性度の判定や治療法の検討が困難となるケースが少なくない一方で、オーナーの迷い、ペットの負担軽減に配慮した際、「麻酔をかけない検査」を念頭に方針を決めることも重要である。しかし、FNAなど、麻酔を避ける手段のバリエーションと診断精度は充分に高いとは言えず、選択肢を広げるための臨床研究を多角的な視点で進めていくことは、獣医療が抱えている大きな課題となっている。

そこで、イランのテヘラン大学は、人医療の腫瘍マーカーとして脚光をあびるマリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に着目して、皮膚腫瘍症例および臨床上健康な犬における相違点を分析し、以下の事項を発表した。

◆犬の皮膚腫瘍と血清中MMPの関連性◆
・全ての罹患犬からMMP(MMP-2またMMP-9)が検出される
・MMP-9の濃度および酵素活性は、良性よりも悪性腫瘍の方が高くなる
・線維肉腫に限り、MMP-2が認められる
・肛門周囲腺腫が再発する前兆としてMMP-9が上昇する

上記のことより、MMPは、犬の皮膚疾患が腫瘍であるか否かを判定するための有用なマーカーであると思われる。また、既に、犬の脊髄腫瘍とMMPをテーマにした報告も上がっていることを考慮すると、動物に発生する「腫瘍全般」を対象にした世界的な大規模臨床研究を立ち上げ、血清中MMP濃度または活性測定を行うことが望ましいのかも知れない。

採血のみで、病変部位(腫瘍組織)の悪性度判定や術後モニタリングが可能となれば、オーナーおよびペットの負担は大幅に軽減されると思います。

採血のみで、病変部位(腫瘍組織)の悪性度判定や術後モニタリングが可能となれば、オーナーおよびペットの負担は大幅に軽減されると思います。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29719660


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