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慢性腸症を抱えた猫の治療反応性と転帰に関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫に起きる慢性的な炎症を伴った消化器のトラブル、いわゆる慢性腸症は、文字通り長期的な経過を辿る。そのため、治療への反応性(寛解するか否か)が罹患猫の生死に影響すると考えられるのだ。しかし、その影響に関する情報は乏しいのが現状である。

 

そこで、RVCは、過去13年間(2008年6月〜2021年11月)に大学付属動物病院を訪れて慢性腸症と診断された猫の診療記録と腸組織のサンプルを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆慢性腸症を抱えた猫の治療反応性と転帰◆
・65件のデータが集積された
・うち83%、54件の経過が追跡できた(①)
・①の37%、20件が安楽死となった(中央値129.5日、8~2970日)
・①の46%、25件が寛解し、且つ、生存していた(②)
・臨床的な寛解に至るまでの日数は中央値で916日であった(78~2113日)
・②の64%、16件が食餌反応性であった
・寛解を達成することで死亡するリスクが減少した

 

上記のことから、治療に反応して寛解をすることが生存する可能性を高めることが窺える。そして、おそらくだが、寛解で安楽死を免れることも期待できる。よって、今後、寛解した症例と寛解しなかった症例のデータを比較して「寛解率100%」を目指せる治療法の確立をする研究が進み、猫の消化器診療のレベルが向上することを願っている。

本研究では、過去の診療記録を解析するということもあって、病理医(獣医師)が改めて腸組織のサンプルを観察したとのことです。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13569


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