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不妊・去勢手術後に肥満になる犬の体内で起きる変化を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

肥満。それは、不妊・去勢手術を受けた犬に非常に良く見られる「病的」な現象である。しかし、そのメカニズムはというと、その詳細は分かっていないのが現状だ。果たして、術後に肥満となる犬の体内では何が起こっているのだろうか。また、その変化に対する対策・治療法はあるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、中国の大学らは、臨床上健康で、且つ、9ヶ月未満のビーグル16匹に不妊・去勢手術を実施し、彼らの臨床検査データを解析する研究を行った。なお、同研究では、手術から21ヶ月後の体重とBCSによって①理想体重グループと②肥満グループの2つに犬を分けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆手術後に肥満になる犬の体内で起きる変化◆
・①は4匹、②は12匹で構成されていた
・平均体重は①で13.22 ± 1.30 kg、②で18.57 ± 1.08 kgであった
・平均BCSは①で5.00 ± 0.41、②で7.92 ± 0.82であった
・①に比べて②ではTGおよびHDLが有意高かった
・①に比べて②ではアディポネクチンが有意に低かった
・①に比べて②ではTCHOおよびレプチンが高い傾向にあった
・①に比べて②ではアディポネクチンとレプチンの比(APN/LEP)が低くなる傾向にあった
・①に比べて②では糞便内における微生物の多様性が乏しい傾向にあった
・①に比べて②ではバクテロイデス、プレボテラ 9、メガモナスの割合が少ない傾向にあった
・①に比べて②では糞便中の酢酸、プロピオン酸、酪酸が有意に減少していた
・SCFA産生細菌の量と体重、TG、HDL-C との間には負の相関関係があった

 

上記のことから、不妊・去勢手術後に肥満となる犬の脂質代謝と内分泌機能は低下していことが窺える。また、それらと同時に腸内細菌叢に変動があることが推測できる。よって、今後、腸内細菌叢(特にSCFA産生細菌の量)をコントロールする方法が考案され、その肥満予防効果について検証されていくことに期待している。

16匹の内訳は、オス6匹、メス 10 匹だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37632755/


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