犬猫の腫瘍性疾患は、様々な臓器・組織に発生するが、確定診断に繋がるマーカーや予後判定法について確立されていないものが多く、その一つに、髄膜腫が挙げられる。また、人医療では、前述の腫瘍に対する診断マーカーと予後判定因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、MMPの阻害物質(TIMP)が注目されているが、小動物臨床では検証されていない。
そこで、イタリアのペルージャ大学は、犬の髄膜腫におけるMMPおよびTIMPの発現を確認する研究を行った。同研究では、髄膜腫と診断された犬43例のホルマリン固定組織がサンプルとなっており、リアルタイムPCRによる遺伝子の検出が適応されている。すると、髄膜腫の中でも、悪性度が高いと考えられている乳頭状髄膜腫の症例で、MMP-2の高い発現が認められた。さらに、MMP-2 / TIMP-2という比を用いた解析でも、乳頭状髄膜腫は高値を示すことが明らかとなっている。
上記のことから、MMP-2とTIMP-2の遺伝子検査は、予後不良になるリスクが大きい髄膜腫、つまり、乳頭状髄膜腫を鑑別できる有用な手技と言える。今後、研究が進み、犬の髄膜腫の診断・予後判定法について、基準値(参照値)やガイドラインが作成されていくことを期待したい。
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