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肝膿瘍に対する外科手術を受けた犬の診療記録を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

感染、炎症、外傷、腫瘍などによって発生する肝膿瘍は、罹患犬に食欲不振、嘔吐、発熱などを起こし、膿瘍が破裂した場合には敗血症性腹膜炎を生じて、死へと誘う病気として知られている。そのため、膿瘍を切除する外科手術によって治療されることがあるのだ。では実際のところ、手術をすれば全ての症例は助かるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学および動物病院らは、過去11年間(2010~2020年)に外科手術を受けた犬の肝膿瘍症例の診療記録を解析する研究を行った。すると、38例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆肝膿瘍に対する外科手術を受けた犬の診療記録◆
・約55%の症例で嘔吐、誤嚥性肺炎、膵炎などの合併症を認めた
・80%以上の症例で腹水が認められた
・サンプルが採取された23件の90%以上で敗血症性腹膜炎が確認された
・細菌培養のデータがある35例の約70%から単一の微生物が検出された
・最も一般的な微生物は大腸菌であった
・約30%の症例が肝腫瘍を抱えていた
・入院期間は中央値で5日(3~17日)であった
・2例が術中死となった
・6例が退院前に死亡した
・無事に退院できた症例の生存期間は中央値は638日であった(ある時点で追跡できなくなった症例を含む)
・膿瘍が再発した症例はいなかった

 

上記のことから、外科手術を受けた症例の80%近く(①)が退院し、1.5年以上生存する可能性を見出せることが窺える。しかし一方で、20%の症例(②)は退院できないことが分かる。よって、今後、①と②の相違点を洗い出す研究が進み、外科手術に併用する補助療法が考案され、生存率が改善することに期待している。

術後からの生存期間は、追跡ができなくなった症例で最長1418日、死亡が確認できた症例で1292日だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36413335/


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