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発症前の関節疾患を抱える犬を発見できる下肢対称性指数

投稿者:武井 昭紘

一般的なペットである犬は、小型〜大型まで、「多様な筋骨格」を特徴としている。これは、ドックショーで高く評価される様な、個体の美しさに繋がる外見を与えることもあるが、QOLや寿命を左右するトラブルを発生させる要因にもなってしまう。例えば、イギリス国内のジャーマン・シェパードでは、種特有の「腰の低さ」に伴う起立困難を理由として、安楽死されるケースが後を絶たないのである。そのため、整形外科疾患で苦しみやすい品種を対象に、ペットオーナーと動物病院が連携して、早期発見・早期治療を実現をする検査法やシステムの確立が重要となる。

そこで、ブラジルのサン・パウロ大学は、前述の課題を解決するにあたり、骨格が印象的な「ある犬種」を対象とした歩行解析に関する研究を行なった。同研究では、臨床上健康なイングリッシュ・ブルドッグ30匹に感圧式通路(通り過ぎた物体から受ける圧力を計測する装置)を歩いてもらい、後ろ足の使い方を数値化した下肢対称性指数(limb symmetry index)を算出した。

すると、骨格に獣医学的な問題点を抱えていない犬の基準値(0.3〜9.6%)と比較して、本研究のイングリッシュ・ブルドッグの指数は19.8 ± 19.5%(数字が大きい程、バランスの悪い足の使い方をしている)であることが明らかとなった。さらに、全ての供試犬が臨床上健康とされていたにもかかわらず、X線検査において、股関節形成不全が確認されたとのことである。

上記のことから、下肢対称性指数は、症状が表面化する前に、骨格や関節の病気を検出できる有用な手法と成り得るのではないかと考えられる。

今後、圧力センサーを搭載したコンパクトな歩行解析装置(折り畳み式マットなど)が、小動物臨床用に製品化されていくことを期待します。

今後、圧力センサーを搭載したコンパクトな歩行解析装置(折り畳み式マットなど)が、小動物臨床用に製品化されていくことを期待します。

 
参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/29096664/?i=18&from=dog


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