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尿サンプルの保管方法と細菌培養の結果の関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

尿検査において細菌培養と同定は、尿路感染症の診断に大きく寄与している。そのため、細菌培養の正確性を担保することは大切で、とりわけ尿サンプルの保管方法は細菌の増殖に深く関連して試験の結果を左右するとして重要視されている。そこで、疑問が浮かぶ。オーナーの自宅で採尿した場合、動物病院に尿サンプルを持ち運ぶまでには時間が掛かってしまう。つまり、室温なのか冷蔵なのか、何れかの方法でサンプルを保管する時間が生じるのだ。果たして、これらの違いによって、細菌培養の結果は影響を受けるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、国立台湾大学は犬と猫の尿サンプルを細菌培養に用いて、サンプルの保管方法ごとの結果を比較する研究を行った。なお、同研究では、①採尿直後、②室温で24時間保管後、③冷蔵(4℃)で24時間保管後にて細菌培養が実施されている。すると、犬のサンプル30件、猫のサンプル49件のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆尿サンプルの保管方法と細菌培養の結果の関連性◆
・猫の尿サンプル全てで①②③の結果が一致した
・①で陽性となった犬の尿サンプル8件の結果は③と一致していた
・②で陽性となった犬の尿サンプルは10件であった
・犬の場合、②の保管方法で偽陽性が生じた

 

上記のことから、猫の尿サンプルを用いた細菌培養は保管方法の影響を受けないことが窺える。対して、犬の尿サンプルでは①③と②の結果に差異が生じることも分かる。よって、猫よりも犬の尿検査において、より慎重にサンプルの保管方法に注意を払い、オーナーに冷蔵保存を推奨することをお薦めする。

猫の尿サンプルを用いた細菌培養が保管方法の影響を受けていないことは、彼らの尿濃縮能と関連しているのかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37981906/


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