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ビーガン食を与えられた猫127匹の健康状態を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

80億人を超えた世界人口を維持する上で、充分な食糧を用意することは喫緊の課題である。中でも、産業動物から得られる肉類は、大量の飼料を要するため、食糧危機を前にすると非効率的な生産物と言われているのだ。そこで注目を浴びている食糧の一つが植物なのである。しかし、この植物をベースにした食糧には大きな問題点があるとされている。肉類に比べて、タンパク質含有量が少ないのだ。つまり、ヒトや犬猫などの肉食動物の栄養管理において、植物をベースにした食糧は不適切だと考えられているのである。ならば、ここで疑問が浮かぶ。前述した食糧危機を念頭して犬や猫に植物をベースにした食糧、いわゆるビーガン食を与えるとして、そこには何か問題は発生するのだろうか。彼らの健康は損なわれてしまうのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパおよびオーストラリアの大学らは、少なくとも1年以上猫を飼育している世帯を対象にして、彼らの食餌と健康状態を調べる研究を行った。すると、食餌管理をしている人物1300名か以上から回答が得られ、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ビーガン食を与えられた猫127匹の健康状態◆
・91%の猫(1200匹以上)が肉類ベースの食餌を食べていた(①)
・9%の猫(127匹)がビーガン食を食べていた(②)
・22に分類された各疾患(リンク先の文献をご参照下さい)の発生率は一つを除いて①と②に有意差はなかった
・その一つは腎疾患であった(①よりも②で発生率が高い)
・ビーガン食の猫において下記のリスクが低下していた(有意差はないが統計学的に傾向はある)
1.動物病院での受診
2.体調不良に関する診察
3.重篤な疾患に関する診察
4.薬剤の処方
5.療法食の処方
6.体調不良の猫1匹における健康問題の数

 

上記のことから、①よりも②の方が健康的な傾向があると考えられる。よって、今後、迫りくる食糧危機に備えた(植物ベースの)猫用フードが数多く開発され、その安全性が検証されていくとともに、肉類ベースのフードと植物ベースのフードを自由に選択できる未来が訪れることに期待している。

①よりも②で腎疾患の発生率が多いことにつきまして、過去の報告、および、同研究のサンプル数を考慮すると、過大評価しない方(深刻に捉えない方)が良いとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37703240/


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