家庭犬が、何らかの原因によって、過度に不安を感じやすい精神状態に陥った場合、同居しているヒトが不都合と捉える問題行動を頻発するようになり、獣医師が介入した治療が必要となるケースがある。この際に、行動療法(訓練士が主体の場合も)、基礎疾患への対処、薬物療法などが検討されるのだが、「不安を抑える薬物療法」に対して、とりわけ、ネガティブなイメージを持つペットオーナーは少なくない。
そこで、カナダのオタワ大学が中心となり、樹木成分の不安抑制効果について、研究が進められた。同研究では、広葉樹であるアメリカスズカケノキから抽出されたトリテルペンが採用されており、雷恐怖症(音恐怖症)の犬に投与すると、不安行動およびステロイドホルモン(コルチゾール)が減少することが明らかとなっている。さらに、仮設定した薬用量の5倍にあたるトリテルペンを犬に与えるという28日間の安全性試験もクリアしたとのことである。
このトリテルペンは、抗不安だけではなく、抗炎症、抗腫瘍、抗菌作用などにも注目が集まり、北米での製品化が実現している成分である。将来的に、トリテルペンの「幅広い」有用性が世界的に立証されて、日本の小動物臨床に応用されることに期待したい。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28895076/?i=7&from=dog