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犬猫を所有しているヒトのマダニ遭遇率の高さを数値化した研究

投稿者:武井 昭紘

マダニが媒介するヒトの感染症の中には、重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome、SFTS)など致死的経過を辿るものがあり、今年に入ってからも、6月および7月(YAHOO!ニュースをご参照下さい)の2ヶ月連続で、ヒトの死亡例が報告されている。また、マダニ媒介性感染症では、「ヒトがマダニに接触する可能性を排除する」ことが、最も重要な予防対策であるとされている。そのため、犬猫にもマダニが寄生することも知られていることから、ペットの飼育(ペットへの接触)とヒトのマダニへの遭遇率における関連性を明確にすることも、一つの課題として挙げげられる。しかし、上記のリスク(遭遇率)が如何ほどのものなのかについて、明確な数値で示された研究は少ない。

そこで、アメリカのメリーランド州健康精神衛生省(Maryland Department of Health and Mental Hygiene)は、飼育している犬猫の有無とオーナーのマダニ遭遇率に関して検証を行った。今回の研究では、ライム病罹患率が一定以上(参考ページではendemicと表記されている)の3つの地域が対象となり、以下の通り、犬猫を所有していないヒトと比較して、ペットオーナーのマダニ遭遇率が高いことが明らかとなった。

◆ペットの所有に伴うマダニ遭遇率の上昇◆
1.ticks crawling on household members(マダニが皮膚の上を這う)は1.83倍
2.ticks attached to household members(マダニが皮膚に付着する)は1.49倍

このことより、「ペットオーナーである」ということで、ヒトがマダニへ曝露される機会が増加することが示されたことになると考えられる。つまり、獣医師および動物看護師が、ペットオーナーにマダニ予防の必要性を啓蒙していくこと自体が、ペットを守るだけではなく、「ヒトの命も守る」ことに繋がると言えるのではないだろうか。

小動物臨床における予防医療は、ペットとヒトの「2つの命」を守るという大きな役割があると認識して、診療業務にあたることが大切なのかも知れません。

小動物臨床における予防医療は、ペットとヒトの「2つの命」を守るという大きな役割があると認識して、診療業務にあたることが大切なのかも知れません。

 

参考ページ:

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/zph.12369/abstract


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