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手術をしない靭帯断裂症例や外科手術後の関節を補助するオーダーメイドサポーター

投稿者:武井 昭紘

ヒトおよび犬において、事故・災害や過度な運動が原因となり、靭帯を損傷・断裂することがあり、「手術を受ける」のか「手術をしない」のかという2者択一の決断に迫られるタイミングを迎えることになるはずである。そして、患肢の筋力を維持するために、痛みをコントロール(疼痛管理を)しながら、手術を受けた場合は術後のリハビリテーションを実践し、手術をしない場合には可動域が変化した関節で受傷前に近い動きを再現することが重要である。しかし、既存のサポーターや固定具は、脱着が困難(重装備)、犬の動きが不自然になる、関節の可動域の病的変化を修正する力が弱いなどの理由により、獣医師またはペットオーナーにとって利便性が高いとは言えない(ペットにとっても同様)。

そこで、アメリカのネブラスカ州にあるAce Ortho Solutions社は、オーダーメイドサポーターで関節の痛みを緩和するとともに、犬の事前な歩行を実現するための製品をリリースしている。このサポーターはHero Braceと呼ばれており、靭帯損傷・断裂に伴う四肢骨の変位(疼痛の発生要因の一つ)を逆行する力で抑止する特徴がある。具体的には、リンク先のページの中程の画像で、赤の矢印(四肢骨の変位を起こすベクトル)に対抗する緑の矢印(変位を修正するベクトル)がサポーターによる効果である。さらに、同製品は、「200以上存在する犬種に対して100種類以上の多様なサイズのサポーターが必要である」というコンセプトの基に、オーダーメイドのサポーターを作製するサービスも提供している。また、Hero Braceは、ウォータープルーフ(防水)加工が施されており、獣医師やペットオーナーが衛生管理する上でも、有用ではないだろうか。

小動物臨床では、経済的負担を理由として、整形外科手術を受けられないケースは珍しくないため、上記のようなサポーターはペットおよびペットオーナーにとって非常に心強い存在となるはずである(同社ホームページ上では、階段、起伏のある坂道、雪原などでHero Braceを装着した犬が運動する様子が見られる)。今後、日本の獣医療においても、手術を断念した症例の関節の補助機能や術後管理の利便性を高めたサポーターが開発・製品化されることに期待したい。

「靭帯の損傷・断裂は手術で治療する」という考え方が獣医学での正しい判断だと思いますが、「手術が受けられない症例に何ができるか?」を前提としたサポーターなどの医療機器を開発することも重要なのかも知れません。

「靭帯の損傷・断裂は手術で治療する」という考え方が獣医学での正しい判断だと思いますが、「手術が受けられない症例に何ができるか?」を前提としたサポーターなどの医療機器を開発することも重要なのかも知れません。

 

参考ページ:

http://goherogo.com


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