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アメリカの大学が犬の変性性脊髄症の診断に有用なマーカーを発表

投稿者:武井 昭紘

犬の変性性脊髄症(Degenerative myelopathy、DM)は進行性の神経疾患で、椎間板ヘルニアに類似した症状から始まり、最終的には呼吸筋の麻痺に伴う呼吸困難で斃死する難病である。そして、2009年には、アメリカのミズーリ大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学が、犬のDMはヒトの難病である筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)と同一の遺伝子(SOD1)が変異していることが原因であることを発見している。また、DMの診断は確立しておらず、MRI検査によるDM以外の脊髄疾患を否定する除外診断およびSOD1の変異の有無を確認する遺伝子検査(診断の補助)などに留まっている。

そこで、ミズーリ大学はALSの診断マーカーであるリン酸ニューロフィラメントH(Phosphorylated Neurofilament H、pNF-H)が、犬のDMの診断にも有用であるかについて研究を行った。研究には、DMと診断された犬と罹患犬と同年齢の臨床上健康な犬が参加して、血液中および脊髄液中のpNF-H濃度が測定された。その結果、血液中pNF-H濃度とDMの関連性は認められなかったが、「脊髄液中pNF-H濃度」はDMと相関関係にあり、診断マーカーとして有用であることが判明した。

今後、研究が進み、臨床データが蓄積されることで、脊髄液中pNF-H濃度が犬のDMを早期に確定診断できる手法となることを期待したい。そのためには、交通事故などによる脊髄損傷とDMにおけるpNF-H濃度の相違点や出現するpNF-Hのサブタイプの有無などを確認することが課題となってくるかも知れない。さらに、東京大学は血液中のpNF-HをDMの診断マーカーにするための研究を実施中であるようなので、良好な研究成果が得られることを願っている(脊髄液よりも血液の方がサンプル採取をしやすく簡便であるため)。

DMの病態によっては、麻酔が必要なMRIがリスクとなる場合があるので、脊髄液(局所麻酔下で採取方法の確立が理想的)や血液から確定診断へと繋がれば、これから起きる体調の変化にペットオーナーが対応しやすいと思います。

DMの病態によっては、麻酔が必要なMRIがリスクとなる場合があるので、脊髄液(局所麻酔下で採取方法の確立が理想的)や血液から確定診断へと繋がれば、これから起きる体調の変化にペットオーナーが対応しやすいと思います。

 

参考ページ:

http://munews.missouri.edu/news-releases/2017/0503-biomarker-test-for-lou-gehrigs-disease-useful-in-diagnosing-canine-neurodegenerative-disease/


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