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犬とヒトとのコミュニケーションを進化させる可能性を秘めた研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトの乳児(新生児)の発育にとって、両親を含めたヒト(他人)からの声掛けは重要な役割を担っているとされている。特に、多くのヒトが乳児に話しかける際に遣っている「日常会話とは異なる特別な発話」は、対乳児発話(Infant-directed speech、IDS)またはマザリーズ(母親語)と呼ばれており、乳児の言語能力などの脳機能の発達に関与しているとされ、研究が日々行われている。これと類似した現象は、ヒトが犬を相手にする時にも見られることがあり、IDSとの対比で、Dog-directed speech(リズミカルな高い声と短い単語)と呼ばれている。

アメリカのニューヨーク市立大学はDog-directed speechに注目をして、各年齢層の分けられた犬が、どのように反応するのかを観察する研究を行った。まず、子犬、成犬、老犬の写真にDog-directed speechを遣って話しかけてもらうことで発話を録音して、音声データを解析すると、ヒトは全ての年齢層に共通の発話をしていることが判明した。次に、この音声を子犬、成犬、老犬に聞かせてることで行動の様子をチェックした結果、子犬は鋭敏な反応を示したが、成犬および老犬の反応は乏しいということが明らかとなった。

上記のことから、一般的に頻用されているDog-directed speechは、子犬とのコミュニケーションに適している対子犬発話(Puppy-directed speech)として利用できる手法であることが示唆されると同時に、成犬および老犬とのコミュニケーションには既存のDog-directed speechでは不十分である可能性が推測できる。

今後、研究が進み、Puppy-directed speechに代わる対成犬発話(Adult dog-directed speech)および対老犬発話(Senior dog-directed speech)が確立されるようになれば、より豊かなペットライフを実現できるとともに、動物病院スタッフと来院した犬との接し方にも良い変化が起こり、ストレスの少ないスムーズな診療業務が可能となるかも知れない。

動物を安心させたり、病気の回復を早めたりできる発話が開発されることを願っております。

動物を安心させたり、病気の回復を早めたりできる発話が開発されることを願っております。

 

参考ページ:

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/284/1846/20162429


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