腫瘍の外科手術には、時に悩みが付き纏う。その腫瘍が転移しているのではないかという悩みが。特にリンパ節はその最たるもので、転移しているのならば切除が望ましいとされている。しかし、形状、質感、色彩に異常がなければ、リンパ節を見付けることは勿論、転移の有無、引いては、切除の必要性を判断することは非常に難しいのが現状である。
そこで、中国およびブラジルの獣医科大学らは、乳腺腫瘍が発生したメス犬41匹を対象にして、パテントブルーという色素で腋窩リンパ節(axillary lymph node、ALN)を可視化して、その効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、①リンパ節を可視化しない17例と②可視化した24例の手術成績が比較されている(41例中5例は手術を2回受けているためデータは46件)。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆腋窩リンパ節の可視化と手術成績◆
・全ての手術の80%以上でALNが認識できた
・①でALNが切除できた割合は58%であった
・②でALNが切除できた割合は100%であった
・手術時間は①で80分、②で45分であった(有意差あり)
上記のことから、リンパ節の可視化は、手術時間を短縮してリンパ節切除の可能性を高めることが窺える。よって、今後、パテントブルーを活用した乳腺腫瘍に対する外科手術がガイドライン化され、再発に悩む獣医師やオーナー、再発に苦しむ犬が減少することを願っている。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1149315/full