Partial weight reduction protocol(①)。これは、ダイエットの成功と捉える目標体重を、骨格から算出される理想体重よりも上の数値とする減量プログラムだ。同プログラムには利点がある。理想体重を目標とする減量プログラム(②)が少なくとも数ヶ月を要するのに対して、数週間という短期間でゴールに到達できる可能性があることがそれだ。また、理想体重には及ばない目標体重であっても、そこまで落とすことで代謝や運動機能が向上し、生活の質が改善する期待が持てるのである。しかし、これは理論的な話だ。実際のところは、そう上手くいくのだろうか。
冒頭のような背景の中、リバプール大学およびロイヤルカナン社は、過去16年間(2005年1月~2021年7月)に同大学内でロイヤルカナン社が運営する体重管理センターを訪れた肥満の猫50匹以上に①(理想体重よりも少なとくも10%は重い)または②を適応し、体重減少の過程をデータ化する研究をおこなった。なお、同研究では、内分泌疾患(糖尿病、先端巨大症)、肝疾患、消化器疾患、腎疾患を抱えている症例は除外されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆①または②を適応した肥満の猫の経過◆
・全例が健康を損なうことなくプログラムを遂行した
・②を適応した猫は294日(113~967日)でプログラム開始時の体重から23%の減量に成功した
・①を適応した猫は178日(54~512日)でプログラム開始時の体重から25%の減量に成功した
・②に比べて①では1週間あたりの体重減少スピードが速かった
・②に比べて①では来院回数が少なかった
・②では除脂肪組織量の減少を認めた
・①では除脂肪組織量は変化しなかった
・両プログラムにて一部の栄養素の不足(セレン、コリン、フェニルアラニン、チロシン、カリウム)が認められた
・その他の栄養素に関しては①と②に差はなかった
上記のことから、除脂肪組織量に影響を与えず効率的な体重減少を実現する①は②よりも優れていることが窺える。よって、万病のもとである肥満を治療する必要性がある猫を診察する場合は、理想体重という厳しい現実をオーナーに突きつけるよりも、理想体重には及ばない少しハードルの低い目標を体重を提示して①を実践することが望ましいと思われる。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1211543/full