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イギリス国内で暮らす犬のダニ媒介性疾患の実態に警鐘を鳴らすBSAVA

投稿者:武井 昭紘

マダニの予防には、彼らが媒介する感染症を防ぐ意味も込められている。そのため、世界各国で発生しているマダニ媒介性疾患の実態を把握し、最新の予防対策を講じる必要があるのだ。また、特に陸続きで名だたる国家が隣接するヨーロッパでは、その必要性が高いのである。

 

冒頭のような背景の中、欧米の大学らは、イギリスの高次診療施設7軒を過去14年間(2005年1月〜2019年8月)に訪れ、マダニ媒介性疾患と診断された犬の診療記録を解析する研究を行った。すると、76例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆イギリス国内で暮らす犬のダニ媒介性疾患の実態◆
・25例がエールリヒア症と診断された
・23例がバベシア症と診断された
・8例がライム病と診断された
・6例がアナプラズマ症と診断された
・14例が複数の病原体に感染していた
・アナプラズマとライムを除き殆どの症例にも外国からの、または、外国への渡航歴があった
・エールリヒア症3例とバベシア症2例に渡航歴はなかった
・これら5例は風土病として(病原体がイギリスに定着していると)認識されていなかった

 

これを受けて、英国小動物獣医師協会(BSAVA)は警鐘を鳴らす。渡航歴が無い犬の診察においてエールリヒア症とバベシア症を鑑別リストから無条件に外してはならないと。また、外国からイギリスへ輸入される犬が増えている現状に懸念を示す。風土病ではないマダニ媒介性疾患の病原体がイギリスに生息するマダニに拡散すると。果たして、エールリヒア症とバベシア症はイギリスに定着してしまうのか。そして、それによる犬の被害は如何ほどか。同国でマダニ予防の重要性が今以上に啓蒙されることを願いつつ、今後の動向に注視したい。

治療の末、 80%以上の症例が回復したとのことです。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jsap.13592


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