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尿石症用の療法食を食べた猫の尿を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

尿路に発生する結石、いわゆる尿石は、その結石の素となる結晶成分が尿中で過飽和の状態(relative supersaturation、RSS)になることで形成されやすくなると言われている。つまり、この過飽和を防ぐことで、尿石症は予防できると言えるのだ。では実際のところ、尿石症をケアするためにリリースされている療法食は過飽和を抑え込む効果を有しているのだろうか。また、「抑え込まれた」尿の性状には特徴があるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの大学および世界的なペットフードメーカーであるヒルズ社は、①尿石症用の療法食を食べた猫と②尿石症のケアを謳っていないフードを食べた猫の尿性状を比較する研究を行った。なお、同研究では、ストルバイトとシュウ酸Caに関するRSSを算出する特殊なプログラムが導入されている。すると、①では43例、②では35例分のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆①と②の尿性状の比較◆
1.②に比べて①の尿中にはNaとClの有意に多く含まれていた
2.②ではpH、アンモニウム、K、P、Mg、シュウ酸塩、クエン酸塩、硫酸塩の濃度が高かった
3.②に比べて①の尿ではストルバイトに関するRSSが有意に低かった
4.シュウ酸Caに関するRSSは両群に差が無かった
5.ストルバイトに関するRSSが高まる予測ができるファクターは下記の項目の増加・上昇であった
・pH
・アンモニウム濃度
・Cl濃度
・Ca濃度
・P濃度
・Mg濃度

6.ストルバイトに関するRSSが低下する予測ができるファクターは下記の項目の増加であった
・クエン酸塩濃度
・硫酸塩濃度

7.シュウ酸Caに関するRSSが高まる予測ができるファクターは下記の項目の増加であった
・Cl濃度
・K濃度
・シュウ酸塩濃度

8.シュウ酸Caに関するRSSが低下する予測ができるファクターは下記の項目の増加であった
・pH
・Na濃度
・P濃度
・クエン酸塩濃度
・硫酸塩濃度

 

上記のことから、尿石症用の療法食はストルバイト結石の形成を防ぐ(ストルバイトに関するRSSを低くする)効果を有していることが窺える。一方で、この療法食は尿中のシュウ酸塩濃度の増加を抑えるようだが、シュウ酸Caに関するRSSに影響は与えないことも分かる。よって、今後、シュウ酸Caに関するRSSを低くする効果を療法食に付与するべく、尿中のクエン酸塩および硫酸塩濃度を増加させる成分を療法食に追加するための研究が進められることに期待している。

尿石症用の療法食と尿石症のケアを謳っていないフードは、それぞれ10の製品が対象となったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1167840/full


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