ニュース

関節を負傷した犬の患部における間葉系幹細胞の取り込みを確認した研究

投稿者:武井 昭紘

外傷や加齢などが原因となって犬が発症する変形性関節症(Osteoarthritis、OA)は、一次診療施設で良く遭遇する一般的な関節疾患で、痛みによって罹患犬のQOLが著しく悪化する病気として知られている。そのため、痛みを軽減する治療に重点が置かれるのだが、病態の進行を喰い止める手段が無いのが現状である。一方、話は変わるが、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)は、既存の治療法では根治が難しい様々な疾患を治癒させる希望の光として期待されているのだ。

冒頭のような背景の中、ベルギーの大学および製薬会社らは、前十字靭帯断裂を起こした犬(ボーダーコリー×ラブラドール、去勢オス、9歳齢)に、歯科学の分野で犬に投与することが承認された馬の末梢血由来のMSCsを静脈内注射し、その分布を調べる研究を行った。なお、同研究では、MSCsをテクネチウム99mという放射性物質で標識して追跡できるようにしている。すると、テクネチウム99mは肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓、膀胱などに分布するとともに、関節にも分布することが判明したという。また、靭帯が断裂していない関節に比べて断裂した関節において、MSCs(テクネチウム99m)の取り込みが約41%上昇することが確認されたとのことである。

上記のことから、馬由来のMSCsは靭帯が断裂した犬の関節に分布することが窺える。よって、今後、MSCsが有するかも知れない「OAを予防する効果」について検証され、当該疾患に苦しむ犬とオーナーが減ることを願っている。

今回紹介した論文は、動物種が異なるMSCsを静脈注射して関節内に取り込まれるのを確認した世界初の研究だとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1035175/full


コメントする