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救急疾患の治療でアルブミン製剤を輸液された犬のデータを解析した研究

投稿者:武井 昭紘

アルブミン製剤は、ショック状態に陥る可能性のある救急疾患の一部に使用される医薬品である。そこで、疑問が浮かぶ。このアルブミン製剤は、どのような疾患に適応され、どのような効果を齎すのか。それを明らかにすることは、同製剤を適応する症例を明確にし、救命率を向上させる上で大変に重要なことである。

 

冒頭のような背景の中、ニューヨークに拠点を構えるアニマルメディカルセンターは、過去2年間に動物病院(一次または高次)を訪れてアルブミン製剤による輸液療法を受けた犬120匹以上を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆救急疾患を抱える犬に対するアルブミン製剤の効果◆
・最も一般的な救急疾患は消化器系のトラブルであった(約58%が外科症例、約42%が内科症例)
・アルブミンの輸液でTPとALBが有意に改善していた
・16%アルブミンの輸液でALBの値が最も上昇した
・ショックに関する指数も有意に改善した
・しかし血圧の改善は有意ではなかった
・約6%が輸液療法中に死亡した
・有害事象は認められなかった

 

上記のことから、アルブミン製剤は安全にショック状態の犬を治療する有効な手段と考えられる。一方で、血圧のコントロールには不向きであることも分かる。よって、今後、TPやALBが低い個体などアルブミン製剤を適応すべき症例をリストアップする研究が進むとともに、同輸液療法と併用できる血圧コントロールの方法も纏められていくことに期待している。

本研究では大規模な動物病院が対象となっているため、小規模の動物病院を対象にした同様の研究が計画されると、また新たな見解が得られるかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36799878/


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