新型コロナウイルスによるパンデミックに伴う経済活動の制限、および、それに続く世界的な物価の上昇。今、あらゆる国で生活費の高騰が起きている。そのため、ペットを飼育している世帯では、彼らに掛かる費用の捻出に苦労していると言われている。ペットフード代、ペットシーツ代にペットの予防費・医療費の全てを賄うだけの経済的な余裕が無くなってきているというのだ。結果、動物病院を訪れることがなくなる、あるいは、訪れるタイミングが遅れるのである。つまり、早期診断・早期治療といった獣医学の根幹が揺らいでしまっているのだ。
冒頭のような背景の中、イギリス獣医師会(British Veterinary Association、BVA)は動物医療に纏わる厳しい現実を発表した。なお、それによると、5匹に1匹、同国内で飼育されるペットの実に20%が必要な医療サービスを受けられておらず、その原因の90%以上が経済的な理由だという。また、イギリスの獣医師の99%が、過去1年間に「もっと早く連れてきて欲しかった」と感じた症例に遭遇しており、パンデミック以前の2018年と比べて20%も増加しているとのことである。
改めて言うまでもないが、生きている以上、ペットは病気になるリスクを抱えている。そして、その病気の発見が遅れれば、助かる命も助からなくなる。無論、重症になればなるほど医療費も高くなるだろう。要するに、経済的な理由で来院のタイミングが遅れ、ネックとなっている医療費が更に高騰する悪循環に陥るのだ。これは、動物福祉上の危機である。果たして、動物福祉における先進国と自負するイギリスは、どのような対策を講じるのか。今後の動向に注視したい。
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