ニュース

猫の伝染性腹膜炎の診断効率を上げて罹患猫の治療反応性を評価するマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)は、猫が致死的経過を辿るウイルス性疾患である。そのため、早期に診断し治療をすることが理想とされるのだが、世界的に広く認知され普及した有効な治療法が無いのが現状である。一方、話は変わるが、2019年末から流行したCOVID-19の治療薬レムデシビルや、レムデシビルが生体内で変換された抗ウイルス成分GS-441524をFIPの猫に投与した研究では、治療開始から12週目にして症例の80%が回復したと報告されているという。そこで、疑問が浮かぶ。同治療薬で回復する確率は80%。残りの20%には効かない。この違いを、つまり、症例の治療反応性を把握する手段はあるのだろうか。救える命を的確に見抜くために、その手段を特定することは重要だと言える。

冒頭のような背景の中、エディンバラ大学は、血液中および滲出液中に含まれる急性期タンパク質(AGP、Hp、SAA)に着目して、FIPの猫の治療反応性を評価するマーカーの開発をする研究を開始した。なお、同研究では、FIPが疑われる猫100匹(少なくともFIPと診断される猫40匹)に参加してもらうことを目標としており、彼らにレムデシビルやGS-441524を投与して、理想的には24週目までの急性期タンパク質の変動を観察するという。そして、その変動を治療結果(回復、治療中、再発、投与量の増加・別の薬剤の追加、安楽死など)と照合するとのことである。

果たして、FIPを発症した猫の治療反応性を把握する手段は確立されるのか。今後、動向に注視するとともに、今回紹介した研究が一定の成果を上げることに期待している。また、その成果に基づいて、当該疾患の効率的な治療が実現し、救命率が上がることを願っている。

本研究におけるFIPの診断には、
特定のアルゴリズムが用いられております。

 

参考ページ:

https://www.ed.ac.uk/vet/services/easter-bush-pathology/research/research-articles/there-is-hope-for-cats-with-fip


コメントする