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甲状腺機能低下症と診断されやすい犬の特徴を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

甲状腺機能低下症は、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが低下する病的現象で、一次診療施設を訪れる犬に良く見られる内分泌疾患として知られている。そのため、同疾患の有病率と発症リスクを把握することは重要で、最新の状況にアップデートし続けることが望ましいと考えられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、犬の甲状腺機能低下症の実態を明らかにするべく、大規模臨床データベースVetCompassに登録されている犬90万匹以上の診療記録(2016年分)を解析する研究を行った。すると、2100件を超える症例のデータが集積され、以下に示す事項が判明したという。

◆甲状腺機能低下症と診断されやすい犬の特徴◆
・有病率は0.23%であった
・2016年以前に当該疾患と診断された症例は1700件余りであった
・2016年に当該疾患と診断された症例は350件余りであった(1年間における発症確率は0.04%)
・他の犬種と比べてドーベルマンピンシャー(約17倍)、チベタンテリア(約11倍)、ボクサー(約10倍)の発症リスクが高かった
・他の犬種と比べてパグ(約0.3倍)、ヨーキー(約0.4倍)、シーズー(約0.4倍)、ジャックラッセルテリア(0.4倍)の発症リスクが低かった
・純血種、ペット保険への加入、平均体重より重いこと、高齢、去勢手術を受けていることが当該疾患と診断されやすくなるファクターであった

 

上記のことから、有病率は低いものの、特定の犬種あるいは特定の条件の犬の発症リスクは高いことが窺える。よって、前述した3犬種、過体重・肥満の犬、去勢オス、高齢犬を診察する際は、甲状腺機能低下症を疑う臨床検査所見の有無にアンテナを張っておくことが重要だと思われる。

「成犬の体重が増えること」もファクターとなっておりますので、担当する犬の体重の推移には充分に注意しましょう。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36217196/

https://www.rvc.ac.uk/Media/Default/VetCompass/Infograms/221012%20Hypothyroidism%20infographic%20draft%20(1).pdf


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