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ジステンパーウイルスが細胞に侵入する時に使うと思われるタンパク質の構造を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

犬のジステンパーウイルス(Canine distemper virus、CDV)感染症は、致死的経過を辿る疾患として知られており、ワクチン接種によって予防をすることが推奨されている。しかし、近年の研究によると、ワクチン株と野生株のエピトープ(抗体が作用する部位)が異なっているとする報告が上がっている。また、実際、ワクチン接種を終えた犬が同感染症を発症するといった事例も確認されているというのだ。つまり、新しいワクチンの開発、または、抗ウイルス薬の発見が望まれているのである。

冒頭のような背景の中、スイスの大学らは、CDVが犬の細胞に侵入する際に機能していると思しきタンパク質の構造を電子顕微鏡で解析する研究を行った。すると、それはウイルスのHタンパク質にあたるもので、3つのドメイン(非対称的)で構成されていることが判明したという。

これを受け、同大学らは、このタンパク質をターゲットにした抗ウイルス薬の開発に期待を寄せている。そして、犬のみならず、野生動物の感染予防も実現できるのではと述べる。果たして、CDVの猛威を抑え込む抗ウイルス薬は誕生するのか。今後の動向に注視したい。

仮に抗ウイルス薬が開発された場合は、CDVと同様にモルビリウイルス属に分類されるヒトの麻疹ウイルスにもその薬剤が効くのではないかと言われており、年間10万人とも推計される犠牲者(感染によって死亡するヒト)の命が救われると期待されています。

 

参考ページ:

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2208866120

https://mrcvs.co.uk/en/news/22374/Canine-distemper-virus-docking-protein-mapped


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