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交通事故後に跛行した猫と喧嘩をして呼吸困難になった猫の共通点

投稿者:武井 昭紘

①不妊メスの猫が交通事故を主訴に、②去勢オスの猫がケンカをキッカケにした呼吸困難を主訴に、イスラエルの動物病院を訪れた。幸いなことに、①の呼吸状態に大きな異常はなかった(聴診を含む)。しかし、頭部を強打しているのか、歯肉から出血し下顎の両犬歯が欠損していた。対して②の呼吸状態は悪かった。チアノーゼに喘鳴。ケンカで負傷したのか、その前からなのか、いくつかの歯が欠損していた。そこで、両者とも胸部X線検査へと臨んだ。すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。

①の左肺(後葉)に伸びる気管支に、そして、②の気管分岐部に不透過性の異物らしきものが写っていた。そのため、異物の正体を探るべく内視鏡検査が行われた。摘出した異物を確認する。①では犬歯が、②では前臼歯が異物となっていたことが判明した。検査後の2例の経過は良好だったという。

イスラエルのヘブライ大学は、この2匹を「頭部外傷に伴って生じた歯の誤嚥」という世界初の症例として報告した。また、これを受けて、頭部(顎や顔面)に外傷を負った動物の診察では、歯をチェックして誤嚥の可能性を探るべきだと訴える。読者の皆様は、頭部外傷を負って歯が欠けた猫の症例を診察した経験をお持ちだろうか。あると言うならば、次回遭遇した際には、胸部外傷の精査は勿論のこと歯の誤嚥の可能性も考慮して、胸部X線検査を実施することをお薦めする。

①の犬歯には吸収病巣があったとのことです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/epdf/10.1177/20551169221125403


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