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脾臓の破裂に伴う腹腔内出血を起こした犬の文献をレビューして3分の2ルールを再考した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の脾臓に腫瘍性病変を発見した時、そこには「3分の2ルール」が存在していると言われている。具体的には、発見した腫瘍の3分の2は悪性で、その悪性腫瘍のうち3分の2が血管肉腫だとされているのである。また、イギリスは王立獣医科大学の研究によると、これらの腫瘍の3分の2は偶発的に発見され、脾臓に血管肉腫が発生した症例の3分の2はオスで、その血管肉腫を抱える症例の3分の2は血腹症を起こさないというのだ。しかし、筆者は思う。余りにも「3分の2」に囚われすぎてはいないかと。そこには、先入観というか、バイアスがあるのではないかと。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの大学らは、外傷を負った経験が無く、脾臓が破裂したことによる血腹症を起こしたと判断される犬に関する論文をレビューする研究を行った。すると、14件の論文がレビュー対象となり、合計1100匹以上の犬のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆脾臓の破裂に伴う腹腔内出血を起こした犬のデータ◆
・73%の症例の脾臓に悪性腫瘍が認められた(①)
・27%の症例は良性と診断された
・悪性腫瘍のうち約87%が血管肉腫であった(②)

 

「3分の2」をパーセンテージで表すとなると「66.6%」となるだろうか。そうであるならば、①も②も「3分の2」とは言えないのが分かる。加えて、アメリカの大学らは、レビューした文献のエビデンスレベルは低くバイアスが大きいと述べる。果たして、自然の摂理、生理現象、病的現象に従う犬の脾臓疾患の全てが「3分の2ルール」で完璧に説明できるのだろうか。今後、更なる検証が進み、議論が深まることを期待している。

本研究で参照する候補となった論文は2300件以上であったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36322487/


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