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キアリ様奇形を抱えるキャバリアの特徴を病理組織学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

小脳や脳幹(延髄・橋)が大後頭孔を越えて脊中管内に浸入することによって脳脊髄液の還流障害が生じ、脊髄空洞症や神経症状を発症するヒトのキアリ奇形に類似した病態を示す犬の「キアリ様奇形」は、彼らの生活の質(QOL)を低下させる可能性がある疾患である。そのため、QOLを悪化させる要因について把握し、その治療に努めることが重要だとされているのだ。

 

冒頭のような背景の中、コーネル大学らは、脊髄空洞症を伴ったキアリ様奇形(Chiari-like malformation、CM)に対する硬膜生検および外科手術を受けたキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(キャバリア)の10年間分のデータを解析する研究を行った。すると、120件以上のデータが集積し、以下に示す事項が明らかになったという。

◆キアリ様奇形を抱えるキャバリアの病理学的な特徴◆
・診察時の年齢は約44ヶ月齢であった
・手術前に認める症状は約45週間継続していた
・5段階のQOLスコアは約2.7であった
・脊髄空洞症は症例の約32%で頚部のみ、約14%で頚部と胸部、約54%で頚部・胸部・腰部に認められた
・約55%の症例で硬膜に病理学的変化が確認された
・約36%の症例に骨化生、約13%に線維化、約3%にクモ膜の過形成、約2%に石灰化が認められた
・硬膜に病理学的な変化を生じた症例では初診時の時点で4週間と短期間のみ症状が継続していた
・病理学的な変化は年齢、神経症状を呈している時間、脊髄空洞症の位置、QOLと関連していなかった

 

上記のことから、発症から間もなく診察を受けた(受けざるを得なかったと言えるかも知れない)キャバリアでは、硬膜に病理学的な変化が生じていることが分かる。つまり、この変化が罹患個体に何らかの影響を与えていることが窺えるのだ。よって、今後、その影響を明らかにして対処方法を検討する研究が進み、犬のキアリ様奇形に対する診療レベルが向上することに期待している。

罹患個体には、頭蓋形成術および硬膜切開術を伴う大後頭孔減圧術が適応されております。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.954092/full


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