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汎白血球減少症を発症した猫の腸内におけるウイルス叢を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

アメリカと韓国の大学らの研究によると、パルボウイルス感染症を発症した犬と健康な犬の腸内細菌叢は異なっているという。つまり、ウイルスに感染した腸では「環境が変化している」と考えられるのだ。では、しばしば致命的となる猫の汎白血球減少症(Feline panleukopenia、FPL)では一体どのような変化が起きているのだろうか。それを明らかにすることは、ウイルス感染症を深く理解することに寄与するものと思われる。

 

冒頭のような背景の中、オーストラリアと中国の大学らは、①FPLの猫23匹と②臨床上健康な猫36匹の「腸内ウイルス叢」を調べる微生物学的研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆汎白血球減少症を発症した猫の腸内ウイルス叢◆
・②ではネココロナウイルス、2型ママストロウイルス、ネコボカウイルスが最も豊富だった(頻繁に重複感染していた)
・feline chaphamaparvovirusは②のみから検出された
・①では2型ママストロウイルス、ネココロナウイルス、2型ネコボカウイルスが最も豊富だった
・ネココブウイルスは①のみから検出された
・カリシウイルスの割合は②に比べて①で有意に高かった
・アストロウイルスは両群で豊富であったが②よりも①で有意に多かった

 

上記のことから、①と②の腸内ウイルス叢は異なっていることが窺える。果たして、この違いは何を意味しているのだろうか。ある条件の腸内ウイルス叢を有する個体はFPLを発症しやすいということだろうか。あるいは、FPLの病原体である猫汎白血球減少症ウイルスが感染個体に影響を与えた結果だろうか。今後、その意味を突き詰める研究が計画され、猫のウイルス学および感染症に対する診療が発展することを期待している。

②の猫はシェルターで暮らす個体とのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35765950/


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