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パルボウイルス感染症の犬における腸内細菌叢を解析した遺伝子学的研究

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス(Canine parvovirus、CPV)感染症は、白血球の減少(免疫力の低下)と重度の消化器症状(嘔吐、下痢)を呈するウイルス性疾患の代表格である。そのため、当該疾患では、感染個体に対症療法を適応して症状の緩和を図るのだが、同一の治療であっても、症例によって、回復する個体と、致死的経過を辿る個体に明暗がハッキリと分かれてしまうことが現状となっている。

それは、まるで、この厳しい現実が、「CPV感染症には対症療法を」という概念の根本を否定していかのようにも感じるのだ—–。

 

そのような背景の中、ミネソタ大学と韓国の大学は、①臨床上健康な犬と②CPV感染症に罹患した犬における腸内細菌叢の違いを探る遺伝子学的研究(16S rRNAのシーケンス)を行った。すると、①ではバクテロイデスに属する菌が多く検出された一方で、②では大腸菌、 サルモネラ、ビブリオ、ヘリコバクターなどの病原細菌が属するプロテオバクテリアが大部分を占めていることが判明したとのことである。

上記のことから、CPV感染症に起因する下痢には、腸内細菌叢の乱れが関与している可能性が示唆されたものと考えられる。よって、CPV感染症を疑う、または、CPV感染症と診断した個体が下痢症を呈している場合には、「細菌性」腸炎に対する抗生剤療法を直ちに検討する必要があるものと思われる。

同研究にて、臨床上健康な犬の腸内細菌叢では、Prevotella属とLactobacillus属が豊富だということも発表されております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31434168/


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