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帝王切開が将来の繁殖能力に及ぼす影響を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

難産は、分娩を控えるメス犬の約5~16%に起きるトラブルで、そのうち約60~80%の症例に帝王切開術が適応されているという報告がある。また、短頭種やスコティッシュ・テリアなど一部の品種では難産のリスクが高いことが知られている。しかし、その動物福祉上の問題を抱えている反面、短頭種などは高い人気を誇ってしまっている。つまり、彼らの人気が高まるにつれて、帝王切開術を受ける犬の数(頭数および手術の件数)が増えていくことが考えられるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。この帝王切開術を受けた結果、次の分娩で難産になる可能性、再び手術を必要とする可能性は変化するのだろうか。それを明らかにすることは、既存の繁殖学を見直すキッカケになるものと思われる。

 

冒頭のような背景の中、ドイツはフランクフルトの北方に位置するユストゥス・リービッヒ大学ギーセンは、高次診療施設を訪れたオーナーへの質問とオンラインアンケートの2つの形式によって、帝王切開が将来の繁殖能力に及ぼす影響を調べる研究を行った。すると、260匹を超える犬のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆帝王切開が将来の繁殖能力に及ぼす影響◆
・約45%の犬が①帝王切開術を受けていた(残りは②自然分娩をしていた)
・①を受けた犬の約93%、②を経験した犬の約91%が再度妊娠をした
・品種、手術歴、産仔数は次の出産における産仔数に影響を与えなかった
・品種および手術歴は「その後の繁殖能力」に影響を与えていなかった
・しかし①を受けた犬は再び①が適応される可能性が有意に高かった
・ブルドッグに属する品種は①を受ける可能性が高かった
・約42%のブルドッグが1匹目を自然分娩するも、2匹目以降を自然分娩できたのは31%に留まった

 

上記のことから、①を受けることは、その後の繁殖能力を下げることにはならないと考えられる。しかし、①を経験した犬は、その後も手術を繰り返すことになることも分かる。よって、今後、難産を起こさず、①を受けなくても分娩できるメス犬を増やすべく、短頭種を中心に骨格を見直す繁殖計画が考案されていくことに期待している。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.886691/full


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