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免疫介在性溶血性貧血の犬の尿中に含まれるトロンボキサン濃度を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia、IMHA)を罹患している犬の主な死因の一つに、血栓塞栓症がある。しかし、この病態を把握する、つまり、血栓が形成されて塞栓するリスクを推測できるバイオマーカーは充分に確立されていないのが現状である。一方、人医療では、尿中に含まれるトロンボキサン濃度の上昇が「それ」にあたるとされている。

そこで、グラスゴー大学は、①IMHAと診断された犬20匹および②臨床上健康な犬17匹を対象にして、尿中11-デヒドロトロンボキサンB2(urinary 11-dehydrothromboxane B2、u11-dTXB)濃度を測定し、得られた数値を尿中クレアチニン濃度を用いて正規化(u11-dTXB:Cr)する研究を行った。すると、u11-dTXB:Crのベースラインは②よりも①で高いことが判明したという。但し、①に該当する症例個々の生存期間や血栓症の疑いの有無は、u11-dTXB:Crと関連していなかったとのことである。

上記のことから、u11-dTXB:Crは、①と②を判別する有用なマーカーだと言える。よって今後、u11-dTXB:Crが上昇している犬を対象にして、生存期間や血栓塞栓症リスクを左右するファクターを特定する研究が進み、IMHAで亡くなる可能性が高い犬が1匹でも多く認識され、早期の治療が施される未来が訪れることを期待している。

②は動物病院スタッフが飼育する犬だとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34859495/


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