ニュース

尿閉を解除した猫に起きる利尿に関与するファクターを調べた研究

投稿者:武井 昭紘

尿路の疾患を患い尿道閉塞(尿閉)となった猫は、体外に尿が排泄できなくなり、命の危機に瀕する。そのため、尿閉を解除する処置が適応されるのである。しかし、無事に解除となった後にも、危機は訪れる。閉塞後利尿(post-obstructive diuresis、POD)だ。重度のPODでは、脱水、電解質異常、循環血液量の減少が起きる。そして、最悪の場合、死に至る。だが、PODの発生率やPODを発症する猫の特徴に関するエビデンスは乏しいの現状である。では果たして、PODのリスクを上げる、または、それを予測するファクターとは何であろうか。

冒頭のような背景の中、カリフォルニア大学は、尿閉で同大学付属動物病院に入院した猫260匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、①POD無し、②軽度~中程度のPOD(2mL/kgを超えて5mL/kg未満まで)、③重度のPOD(5mL/kg以上)の3つのグループに症例を分けている。すると、約68%の症例がPODを起こし(症例の35%が③に該当し)、体重の低下、アシドーシス、高窒素血症、高P血症、高K血症、低Na血症、低Cl血症、低Ca血症、高Mg血症、低アルブミン血症が発症に関与していることが判明したという。また、身体検査所見や輸液歴から循環血液量が減少している個体は③に陥る可能性が高まることが分かった。

上記のことから、PODの発症に関連した変数が存在していることが窺える。よって、今後、これらの変数も用いたPOD発症予測法が考案され、生命を脅かすPODを起こすかも知れない症例の判別が容易に出来る未来が訪れること願っている。

①に比べて③の入院日数は中央値で1日長くなることも確認されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.783874/full


コメントする