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リフィーディング症候群を発症した猫の臨床病理学的所見と転帰を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

飢餓状態(慢性的な栄養不良)にある動物に一度に多くのフードを与えると、リフィーディング症候群(refeeding syndrome、RS)が起きる。このRSは、飢餓状態におけるケトン体をエネルギー源とする代謝から無理矢理にグルコースをエネルギー源とする代謝へ移行することで、低リン血症、溶血、低カリウム血症、低マグネシウム血症、浮腫、ビタミンB1の欠乏などが生じ、生命の危機に瀕することが知られている。つまり、RSを発症した動物の生死を分かつリスクファクターを特定し、その予防対策や治療法を考案することが重要だと言えるのだ。

 

そこで、イギリスの王立獣医科大学は、高次診療施設でRSと診断された猫11匹を対象にして、彼らの診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆リフィーディング症候群を発症した猫の臨床病理学的所見と転帰◆
・猫たちは中央値で6週間(最大約15週間)行方不明であった
・11例中8例で体重は約50%減少し、血液中のリンの濃度が50%減になる低リン血症を起こしていた
・全ての症例が低カリウム血症、貧血に陥っていた
・入院中に高血糖あるいは低血糖になる症例が多かった
・循環器、消化管、神経系に関連した症状が一般的であった
・約2週間の入院で8例が無事退院した
・急性腎障害(AKI)およびビリルビン値の上昇が死の転帰と関連していた

 

上記のことから、AKIとビリルビン値の上昇がRSの猫の生死を分けていることが窺える。よって、今後、それらの病態をケアした症例の生存率を算出する研究が進み、罹患猫が退院する確率が上げる治療法が確立することを期待している。

約60%の症例は輸血を必要としていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33404281/


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