ニュース

高血圧症を伴う甲状腺機能亢進症の猫に起きた神経症状

投稿者:武井 昭紘

2ヶ月前に甲状腺機能亢進症と診断された猫(16歳の避妊メス)が高次診療施設を訪れた。どうやら、右の眼瞼が痙攣しているらしい。また、症例を紹介した獣医師によると、右の角膜に病変があり、神経学的検査で異常は認められないという。一体、彼女の身に何が起きたのだろうか。

身体検査の結果、角膜の病変があるから眼瞼が痙攣しているという単純な話ではないことが判明する。無表情で、右の眼瞼反射は消失し、髭は力無く垂れ下がっていたのだ。そこで、各種臨床検査へと進んだ。血液検査では軽度の貧血のみであるものの、血圧測定で甲状腺機能亢進症に伴う高血圧(平均収縮期血圧が230 mmHg)、MRI検査で中脳に出血の痕が確認された。そして、この症例の神経症状は、血圧を下げる治療によって解消されたとのことである。

症例報告を行ったチューリッヒ大学は、高血圧性脳症に伴う二次的な顔面神経麻痺だと結論付けた。ヒト、特に子供で報告はあるが、小動物臨床では報告が無いという。果たして、高血圧の猫において、同様の症状を呈する個体は他にも存在しているのか。また、その症状は必ず血圧を下げることで回復するのか。今後、調査が進むことを期待している。

本症例には、経皮的にチアマゾールが投与されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/20551169211063454


コメントする