2006年動物福祉法。イギリス版の動物愛護法と言える同法律には、犬猫を飼育するオーナーが守るべき飼養管理基準(ファイブフリーダム、5つの自由)が記載されている。その一つが、「飢えと渇きからの自由」だ。つまり、犬猫たちは、適切な栄養管理の下で飼育されるべきと考えられているのである。そこで、一つの懸念が生れる。菜食主義者、いわゆるベジタリアン(卵も乳製品も口にしないヴィーガンを含む)が飼育する犬猫たちは、栄養バランスの良い食餌を摂れているのだろうか。もし摂れていないのであれば、詰まるところ、必要とされている動物由来成分を食べさせてもらえていないのであれば、それは法律的に問題(動物虐待)となるのではないだろうか。
この懸念に対し、イギリス獣医師会(BVA)が見解を示した。なお、詳細は以下の通りである。
◆菜食主義者が飼育する犬猫における動物虐待問題に対するBVAの見解◆
・動物福祉の観点からペットフードに関心を持つことは歓迎する
・しかし犬猫は栄養バランスの取れた食餌を必要としている
・肉類には彼らが求める栄養素やビタミンが含まれる
・菜食主義を満たしたペットフードには「その」栄養を補うサプリメントが必要な場合がある
・また特に猫はタウリンやビタミンAなどを動物由来成分から摂る必要がある
・それをサプリメントで補えると証明したエビデンスは無い
・動物栄養学に精通した専門家から「5つの自由」を満たすフードについてアドバイスをもらって欲しい
・その自由を満たさず犬猫に危害や苦痛を与えた場合は動物虐待の罪で起訴される可能性がある
上記のことから、BVAは犬猫にも菜食主義を適応することを薦めていないことが分かる。加えて、最悪の場合は、動物虐待の罪に問われると警告している。よって、犬猫には動物由来成分を含む栄養バランスの取れたフードを与えることが望ましいと言えるだろう。ところで、読者の皆様は、BVAの見解をどう思うだろうか。そして、本稿で取り上げた問題を犬猫のオーナーから問われた時、どう答えるだろうか。この機会に考えて頂けると幸いである。
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