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アレルギー性皮膚炎を発症した猫に起きている変化を観察した研究

投稿者:武井 昭紘

猫アレルギー性皮膚炎(feline allergic dermatitis、FAD)は、犬やヒトのそれとは差異があるとされているが、詳細な病因論は不明のままである。果たして、FADを発症した猫の体内で起きている変化とは、一体どのようなものなのか。それを明らかにすることは、猫ひいては犬・ヒトのアレルギー性疾患のより深く理解する上で大変に重要と言える。

そこで、Texas A&M大学は、①臨床上健康な猫、②FADの猫、③喘息を患った猫を対象にして、サイトカイン濃度やその受容体の発現を観察する研究を行った。なお、同研究で用いられたサンプルは、血清(サイトカイン濃度の測定)およびホルマリン固定された皮膚組織(mRNAの発現の有無をチェック)である。すると、皮膚組織におけるIL-31、IL-31受容体A、IL-5、IL-33の発現は殆どのサンプルで少ないものの、オンコスタチンM受容体-β(Oncostatin M receptor-β、OSMR-β)の発現レベルは①比べて②で有意に高いことが判明したという。また、有意差はないが、①に比べて②の血清中IL-31濃度は高い「傾向」にあるとのことである(③の濃度も有意差は認められない)。

上記のことから、FAD症例の血清中にIL-31が多く含まれ、皮膚組織にOSMR-βが高いレベルで発現していることが窺える。よって、今後、OSMR-βの機能を阻害する薬剤がFADを改善させるか否かについて検証する研究が進み、猫の皮膚科診療のレベルが向上していくことに期待している。

③の血清中IL-31濃度も有意に高くなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34519120/


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