犬の免疫介在性疾患として挙げられる多発性関節炎(Immune-mediated polyarthritis、IMPA)およびステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(steroid responsive meningitis arteritis、SRMA)の診療では、CRPを炎症マーカーとして利用することが一般的である。そこで、疑問が浮かぶ。このCRPの数値を比較することで、両疾患の鑑別は可能になるのだろうか。
冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、160匹以上の犬のカルテを解析する研究を行った。なお、同研究では、CRPの数値は勿論のこと、年齢、品種、性別、不妊・去勢手術歴、体重、体温、診断が下された季節や月を解析の対象としている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆IMPAとSRMAを鑑別するマーカーとしてのCRPの有用性◆
・IMPA は12 か月齢以上の犬で有意に多く診断されていた
・一方でCRPが高くなればなる程、逆にSRMAと診断される可能性が有意に高まった
・SRMA は12 か月齢未満の犬で有意に多く診断されていた
・一方でCRPが高くなればなる程、逆にIMPAと診断される可能性が有意に高まった
・SRMAの犬CRPは、IMPAの犬のそれよりも有意に高かった
・統計学的にはCRPの有用性が完全に認められず、その可能性が示唆されるのみであった
上記のことから、現時点で、CRPによる両疾患の鑑別は難しいことが窺える。しかし、年齢で区切ると、CRPが診断の補助的な役割を果たせる印象も受ける。よって、今後、両疾患の鑑別をするアルゴリズム(チャート)に年齢とCRPの測定値を組み込むための研究が進み、犬の免疫系疾患に関する診療が効率化することを期待している。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1091318/full