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抗てんかん薬を服用する「てんかん」の犬における活動性を観察した研究

投稿者:武井 昭紘

「てんかん」に伴う神経症状を抑える治療、つまり、抗てんかん薬(antiepileptic drugs、AED)による治療を受ける罹患犬は、しばしば「沈うつ」という副作用を発現し、活動レベルを低下させることがある。しかし、その副作用が日中の活動や夜間の活動(睡眠の質)にどれ程の影響を与えるかについては、不明な点が多いの現状だ。果たして、AEDは彼らの活動レベルを変化させているのか。それを明らかにすることは、当該疾患の治療法を見直すキッカケになるかも知れない。

 

冒頭のような背景の中、ウィスコンシン州に位置する大学および動物病院らは、特発性てんかん(idiopathic epilepsy、IE)と診断された犬60匹以上を対象にして、治療歴と活動性の関係を調べる行動学的研究を行った。なお、同研究では、①罹患犬グループの活動性を②対照グループ(罹患犬と年齢および品種を一致させた臨床上健康な犬)と比較する形式で、データが集積されている。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆IEと診断された犬に適応した治療と彼らの活動性◆
・②に比べて①では平均18%活動性が低下した
・フェノバルビタールと臭化カリウム(KBr)によって治療されたグループでは平均28%活動性が有意に低下した
・①と②の睡眠の質に差異はなかった
・しかしKBrの投与量が多いと睡眠の質が悪化していた

 

上記のことから、AED全体で見ると、活動性は低下するものの睡眠の質は悪化しないことが窺える。一方で、KBrに限ると、その質が悪化することが分かる。よって、今後、KBrで治療されているIEの犬を対象にして、彼らの夜間の活動(睡眠の質)とオーナーの悩みについて解析する研究が進められ、両者の生活の質(QOL)が悪化しないAEDの投与方法が考案されていくことに期待している。

ゾニサミドとレベチラセタムによる治療と活動性につきましては、リンク先の論文をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34223667/


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