ニュース

犬の乾性角結膜炎に関する疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

犬の乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca、KCS)は、涙液量の不足することで起きる角膜・結膜の炎症で、重症になると眼脂、角膜潰瘍、色素沈着などによって視界が妨げられる眼科疾患である。また、当該疾患は、特定の犬種に発生しやすいと言われている。つまり、それらの犬種や個体の特徴を把握し、且つ、アップデートしていくことが、小動物臨床における眼科診療のレベルを向上していく上で重要だと考えられるのだ。

 

そのような背景の中、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、
大規模症例データベースに登録された36万匹余りの犬を対象にして、KCSになりやすい犬の特徴(KCSの疫学)を明らかにする研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆犬のKCSに関する疫学◆
・有病率は0.4%(約1450匹)であった
・混血種と比べてアメリカンコッカースパニエル(約52倍)、イングリッシュブルドッグ(約38倍)、パグ(約22倍)、ラサアプソ(約22倍)がKCSを発症しやすい
・対してラブラドールレトリバー(約0.2倍)、ボーダーコリー(0.3倍)はKCSを発症しにくい
・中頭種と比べて短頭種は約3.6倍、他犬種と比べてスパニエル種は約3倍、KCSを発症しやすい
・標準的な体重またはそれ以下の体重の犬と比べて過体重・肥満の犬は約1.3倍、KCSを発症しやすい

 

上記のことから、列挙した犬種に加えてスパニエル種および短頭種ではKCSに注意を払う必要があることが窺える。よって、該当する犬種の健康診断を実施する際、そして、彼らが眼症状を訴えて動物病院を訪れる際は、KCSの有無を確認することが大切と言えるのではないだろうか。

本研究では、加齢もKCSの発症リスクを上げるファクターになっていることが分かっております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34134171/


コメントする