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心不全の猫における利尿薬トラセミドの効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

心筋症などに起因して、うっ血性心不全(congestive heart failure、CHF)に陥った猫には、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、ピモベンダン、抗血小板薬などが投与される。しかし、オーナーにとって愛猫に毎日投薬することは、獣医師が想像するよりも非常に大変だというのが現状である。つまり、オーナー自身のQOLと猫が感じる投薬ストレスを考えると、投与回数の少ない薬剤の選定・利用が望ましいと言えるのだ。

そこで、フランスの獣医科大学は、肺水腫や胸水を伴った猫のCHFに対するトラセミドの有用性を回顧的に検証する研究を行った。なお、過去の報告(CHFの犬360匹以上が参加した研究)によると、①トラセミドの1日1回の投与は、②フロセミドの1日2回の投与に劣ることなく、加えて、病状悪化のリスクを2分の1に減らすとされている。そして、研究の結果、この過去の報告と同様、①を適用した群の生存期間(中央値182日)は、②を適用した群(中央値148日)に劣ることのない数値となったという。

上記のことから、トラセミドは投与回数を減らしつつも、既存の治療法(フロセミド)に並ぶ効果を発揮することが窺える。よって、今後、前向き臨床研究が計画され、フロセミドに代わって、トラセミドを用いたCHF治療のプロトコールが作成されていくことに期待している。

CHFの再発を経験した症例は、トラセミドを投与されたグループの52%、フロセミドを投与されたグループの19%を占めていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32938442/


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