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外傷に伴う頭蓋骨骨折を起こした犬猫の予後を画像診断学的に追跡した研究

投稿者:武井 昭紘

交通事故、落下、虐待などを原因として、犬猫は頭部に外傷を負うことがある。その際、頭部を構成する骨が骨折すると、様々な神経症状を呈し、最悪の場合、死に至ることもあるのだ。しかし、実際のところ、この外傷に伴う頭蓋骨骨折(Traumatic skull fractures、TSF)が、どのように神経症状や予後に関連しているかについては、情報が乏しいのが現状である。

 

そこで、世界の獣医科大学は、CT検査でTSFが認められた犬と猫を対象にして、神経症状の有無と生存率(受傷から1週間)を記録する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆TSFを抱える犬猫の特徴と予後◆
・犬では頭蓋冠に、猫では顔面と頭蓋底にTSFが確認されるケースが多い
・TSFが顔面のみにある場合は、神経症状を呈する可能性が低い
・TSFが頭蓋底にある場合は、神経症状を呈する可能性が高い
・生存率は約85%であった
・頭蓋冠の骨折(特に複雑骨折や骨折片の転位)を起こすと、死亡する確率が高くなる

 

上記のことから、TSF症例の大部分は受傷からの1週間を生き延びる一方で、頭蓋冠の骨折では予後不良となる可能性が高くなることが分かる。よって、TSFを疑う犬猫を診察する際には「TSF=予後不良」と思い込むことなく、骨折部位の特定を速やかに行い、その結果に応じて、彼らの予後についてインフォームド・コンセントを実施して頂けると幸いである。

本研究には、180匹以上の犬猫が参加しているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32686202/


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