加齢、遺伝子、外傷、腫瘍などの原因によって、ヒトにも犬にも神経系疾患が起きることが知られている。故に、皆様がご存知のことと察するが、両者が発症する各疾患の相違点を検証して、未知の原因の発見、診断マーカーの開発、治療法の確立が毎日のように試みられているのだ。そして、この度、また一つ成果が報告されたようである。
なお、その成果を発表したアメリカの大学らによると、詳細は以下の通りだ。
◆犬における血漿中ニューロフィラメント軽鎖濃度の測定に関する研究◆
・認知機能障害(canine cognitive dysfunction、CCD)または変性性脊髄症(Degenerative myelopathy、DM)の犬を研究対象とした
・本研究では、彼らの血漿中に含まれるニューロフィラメント軽鎖(neurofilament light chain、NfL)を測定している
・臨床上健康な犬の血漿中NfL濃度は、加齢とともに増加する
・また、罹患犬の血漿中NfL濃度は、臨床上健康な犬と比べて、有意に上昇している
上記のこととともに、CCDはヒトのアルツハイマー、DMは筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルになっていること、そして、NfLがヒトの神経系疾患を診断するマーカーとして期待されていることを考慮すると、血漿中NfL濃度の測定は、小動物臨床の神経科診療にとっても有用な診断マーカーになり得ると言える。よって、今後、様々な犬の神経系疾患における血漿中NfL濃度が測定され、その相違点が検証されていくことを願っている。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32472519/