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クッシング症候群の犬が陥る高血圧に関与するリスクファクターに関する研究

投稿者:武井 昭紘

副腎皮質機能亢進症(hyperadrenocorticism、HAC)は、左右の腎臓の傍らに存在している副腎から分泌されるコルチゾールが過剰になる病的現象で、罹患犬に多飲多尿多食、皮膚病、筋肉量の減少、糖尿病、血栓症、高血圧など、実に様々な病態を齎す内分泌疾患として知られている。しかし、様々な病態の一つ、「高血圧」の有病率、および、これを生じさせるリスクファクターに関する研究は乏しいのが現状である。

 

そこで、スペインのマドリード・コンプルテンセ大学らは、HACに罹患した犬66匹を対象にして、高血圧(systemic hypertension、SH)の有病率とリスクファクターを明らかにする研究を行った。なお、同研究では、罹患犬の身体検査および臨床検査(CBC、血液生化学、収縮期血圧、尿検査・培養、副腎機能検査)の所見がデータ化されており、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆犬の副腎皮質機能亢進症と高血圧◆
・80%以上の症例にSHが起きていた(180mmHg以上のケースは46%)
・血小板数が増加している症例はSHを発症しやすい
・SH症例ではカリウムの濃度が低下している
・尿中蛋白/クレアチニン比(UPC)が0.5以上のグループは収縮期血圧が高い
・糖尿病を併発している症例ではSHの発症リスクが低い

 

上記のことから、血小板数の増加、カリウム濃度の低下、UPCの上昇は、SHを発症するリスクファクターになっている可能性があるものと思われ、これらの数値が変動している症例では、定期的に血圧をモニタリングすることが重要であると考えられる。よって、今後、各検査項目において、高血圧の存在を早期に類推するための参照値が設定され、HAC症例の管理が高精度化していくことを期待している。

糖尿病を併発した症例が高血圧になりにくい理由についても解析されると、犬のHACをより深く理解できるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32614466/


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