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妊娠に伴って免疫介在性溶血性貧血を発症した犬の症例報告

投稿者:武井 昭紘

ロンドンの北東、北海に面したサフォークに位置する、獣医学的なリサーチを主な活動とする慈善団体Animal Health Trustが、2020年3月、妊娠した6歳のビション・フリーゼに起きた「ある病的現象」について症例報告を行った。

なお、それによると、この症例は、妊娠中に嗜眠、食欲不振に陥ったことを主訴に動物病院を訪れたとのことである。また、精査の結果、ヘモグロビン尿症と球状赤血球症を伴う再生性溶血性貧血、および、凝集試験の陽性が認められるものの、感染症を疑う所見は得られなかったというのだ。そして、入院中に分娩し、特段の治療は無いままに、次第に貧血は改善していった。

つまり、妊娠をキッカケに発症したと思われる貧血は、胎児を出産することで快方へと向かったということになる。

これを受け、同団体は、今回経験した症例では、妊娠に関連した免疫介在性溶血性貧血(Pregnancy-associated immune-mediated hemolytic anemia)が起きていたと結論付けた。よって、嗜眠、食欲不振、貧血などの症状を訴える妊娠した犬を診察する機会に遭遇した獣医師は、鑑別疾患リストに免疫介在性溶血性貧血を追加し、その貧血の改善には「分娩をさせる」という治療法を適応することを頭の片隅に入れておくことが望ましいのではないだろうか。

本症例は、分娩後、免疫介在性溶血性貧血の再発を起こしていないとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32189467


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